夢は、ビジネス×生物学×閃きでイノベーションを起こすこと。
社会の隅々まで、いいインパクトを届けたい。

楊 美雅

2020年入学 第4期生

ペンシルベニア大学

トーマス・ジェファーソン・ハイスクール・フォー・サイエンス・アンド・テクノロジー出身

楊 美雅さんが将来の目標として掲げているのは、「ビジネスと生物学を統合する分野で、医療をより多くの人に提供できるような仕事」をすること。

楊 美雅さんが将来の目標として掲げているのは、「ビジネスと生物学を統合する分野で、医療をより多くの人に提供できるような仕事」をすること。 ペンシルベニア大学で生物学、化学、経済学などを並行して学んでいる彼女に、壮大なゴールに向かってどのような道筋を立て、大学で学んでいるのかを聞きました。

ペンシルベニア大学で生物学、化学、経済学などを並行して学んでいる彼女に、壮大なゴールに向かってどのような道筋を立て、大学で学んでいるのかを聞きました。

August, 2021

早期発見、早期治療のカギになる!?
「唾液でがんを診断するキット」を発明したい

― 楊さんの将来の夢は、「ビジネスと生物学を統合する分野で、医療をより多くの人に提供できるような仕事」。具体的には、「社会的責任を果たすことを理念にした、国際的なバイオ医療サービス提供ビジネス」と伺っています。ビジネスと生物学を統合する分野、という発想がとても興味深いなと思うのですが、ビジネスに生物学を掛け合わせたものに興味を持つようになったきっかけは何ですか?

家族の中で、がんサバイバー(がんと診断されて治療中、または治療後の人々のこと)がいるので、医療については昔から興味がありました。私が小学5年生、高校2年生の時の2回、家族ががんと診断されていて、その時に医療の大切に直面したというのが、ビジネス×生物学の「生物学」の部分です。「ビジネス」の部分は、高校1年生くらいの頃にタンザニアの孤児院でボランティアをした時の経験がきっかけだったと思います。タンザニアは清潔な水にアクセスするのがなかなか難しいのですが、その状況を見て、水を運搬しながら、同時に水の濾過ができる自転車みたいなアイデアを閃いたんです。このアイデアで、初めて発明起業大会にも参加して、それで段々と、“社会的責任を果たせるような起業”に興味を持つようになりました。その翌年には、瞳の状態を解析して飲酒運転を防ぐアプリというアイデアを形にして、発明起業大会で優勝することもできたんです。これらの発明起業大会での経験と、以前から持っていた医療への興味を組み合わせて何かしたいと考えた結果、医療診断サービスができないかなと、閃きました。

― その閃きについて、もっと詳しく教えてください!「医療診断サービス」は、将来の夢として楊さんが挙げている「国際的なバイオ医療サービス提供ビジネス」のことですね?

勉強、課外活動、ボランティアと忙しく過ごした1年次を終え、2年次がスタートしたばかりの楊さん。

はい。具体的にどんなものを考えているかというと、唾液を利用するがんの診断キット、です。医療の中でも、やっぱり私が一番関心を持っているのは、がんなんですよね。家族内での経験から、特に早期診断の重要性をすごく実感しました。「バイオマーカー」って、聞いたことありますか?病気の有無や性質、進行状態を示す指標の1つで、タンパク質や遺伝子などの体内の物質から調べることができます。最近では研究が進んで、唾液に含まれる遺伝子情報をがんのバイオマーカーとして使えるようになってきているんですよ。がんを診断するには、まだ血液を利用するキットが多いと思うんですけど、唾液で診断ができたら、検査へのアクセスが格段に広がりますし、何より痛くないですよね(笑)。体への負担が小さくて、簡単にできて、診断にかかるコストも低い、かつ、正確な診断ができるものを、より多くの人に届けられるといいなと思っています。

私が思うビジネスは、利益ではなく、
社会へのインパクトが指針

― 唾液を利用するがんの診断キットをより多くの人に届ける、ということを考えた時、手法としてビジネスを選んだのはなぜなのでしょうか?例えば、研究者や医療者として関わる道もあるのかなと思ったのですが…。

実は私も、高校の頃まではずっと医者になりたいと思っていたんです。医者であれば、患者さんの人生に直接インパクトを与えることができるんですけど、ビジネスを通せば、より幅広くサービスを提供できると私は考えていて。医者として、病院内での仕事もすごく大切だと思う一方で、その前段階で病院にたどり着く前や、病院から家庭に戻った後、そこまでインパクトを広げられたら理想的だなと思うんです。例えば、「1 for 1」というビジネスモデルがあります。1つ診断キットを買うと、もう1つのキットを、他に必要としている人に無料で届けられるという仕組みです。これができると、普段から検診などに行かない人たちにもリーチすることができ、インパクトを2倍ぐらいに広げることができます。より多くの人に届けられる可能性があるというのが、ビジネスという手法を考えている大きな理由です。ビジネスというと、利益を得るのが一番のゴールっていうイメージがあると思うんですけど、そうではなくて、社会にどれだけいいインパクトとイノベーションを起こせるかというのを指標にしたビジネス、という感じです。

ふとした瞬間にビジネスアイデアが浮かぶことも。アイデアはiPadに書き留めているそう。

― ソーシャルビジネス(社会起業)というものですね。

そうですね、近いと思います!実はもともと、「ソーシャルビジネス」という言葉を知らなくて(笑)。その言葉自体を知ったのは、以前に参加した起業家のネットワーク会だったと思います。ゲストスピーカーの1人が「1 for 1」ビジネスモデルや、幅広くアクセスできるサービスにすることで生まれる社会へのインパクト、利益ではない価値を持ったビジネスのあり方について話をしていて、そこでやっと、「私が考えてきたことは、ソーシャルビジネスなんだ」と知った感じです。そこで改めて、自分がこれからやりたいことを、ソーシャルビジネスという見方でも捉えるようになりました。

ペンシルベニア大学は“Pre-Professional”。
学生から社会人へ移行する場でもある。

― 楊さんは、実現したいことがかなり具体的に見えていますよね。そうすると、進学先を考える時にはすでに、大学で学びたいことが具体的にあったのかなと思います。ペンシルベニア大学を進学先として選んだ理由は何だったのでしょうか?

一番大きい理由は、「Life Sciences & Management」というダブル・ディグリープログラムがペンシルベニア大学にあったからですね。大学内にあるスクール・オブ・アーツ・アンド・サイエンス(教養大学)と、ウォールトン・スクール(ビジネススクール)の両方から学位がもらえるプログラムで、医療とビジネスが学べる。私の興味にぴったり合っていると思って決めました。他の大学にも下見に行っていて、ノースカロライナ州にあるデューク大学もすごく好きだったんですよ。でも両方の分野を一緒にしたようなプログラムがなかったので、やっぱりペンシルベニア大学だなと。また、知り合いから、「ペンシルベニア大学は“Pre-Professional”、大学でもプロフェッショナルな雰囲気がある」と聞いたのも大きかったと思います。卒業して社会に出る前に、プロフェッショナルな経験や、ネットワーキングで人脈などを作ることができるのかなという期待がありました。例えば、ウォールトン・スクールには「Snider Center Venture Consulting」という、いろんな企業とコンサルティングをして、時給ももらえるというプログラムがあります。他にも、ペンシルベニア大学だと、プロフェッショナルなプログラムが多くある印象だったので、社会経験に近いものを積みながらいろいろ学べることは魅力的だと思いました。

ペンシルベニア大学のランドマーク的な存在の「Fisher Fine Arts Library」と、学生が行き交うメインストリートをまわり、話を伺った。

― 1年次が終わって、現在、2年生ですよね。これからどんどん、専門的な授業を受けていかれると思いますが、大学で楽しみにしている授業は何ですか?

今のところ、まだ生物学や化学の入門的な授業が多いんですが、もう少しハイレベルな医学関連の授業が始まるのを楽しみにしています。例えば、「生物学と分子遺伝学のスーパーラボ」。入学する前に、どんな授業を受けられるんだろうといろいろ調べていた時に見つけて、それ以来、気になっている授業です。“スーパーラボ”って何だろう、ただのラボじゃないんだって思って(笑)。あとは、ベンチャーキャピタル、ヘルスケア起業に関する専門の授業があるので、それもすごく楽しみです。自分の専攻に直接関連しているわけではないんですけど、交渉術を学ぶ授業も取ってみたいなと思ってます。

― 勉強したいこと、たくさんありますね。ペンシルベニア大学での学生生活はあと3年ありますが、卒業するまでにやりたいことも決まっていたりしますか?

やりたいこと、いっぱいありますよ。まずはバイオ医療系の会社の設立に向けて、知識と経験と人脈を得て、自分の力をつけたいです。あと、医療研究の経験も積みたいのと、大学生のうちにまた起業コンテストに応募して、会社を設立するための資金を集める経験をしたいですね。それから、コミュニティ活動とかボランティア活動に参加すること。あとは、インキュベーター(起業に関する支援を行う事業者)に興味があるので、バイオ系のインキュベーターでインターンできたらいいなと思っています。あと、ずっと友達でいられる人を見つけて、良いコミュニティに入れたらいいな。あとは…。

― to doリストがいっぱいですね!

いっぱいあります(笑)。まだまだ時間があると思う一方で、もう1年経ったんだなって感じる部分もあり…。結構、忙しいです。

College Life

― 最後に、日本で暮らす中高生に向けて、海外進学について何かアドバイスはありますか?

私はアメリカで生まれ育ったので、どこまで参考になるか分からないんですけど、今年2021年の夏、日本に5年ぶりに帰って来て、2ヶ月半くらい過ごしたんです。そんな短い間でも、言葉や日本文化を習得できた気がしていて。だから逆に、日本からアメリカに来る学生も、短期間で自分の成長が見られる貴重な機会になると思います。また、これはタンザニアでボランティアをした経験から学んだことですが、異文化体験って、すごく大事だと思うんです。面白い人に出会えたり、刺激をもらったり。その分、いろんなチャレンジに直面すると思うんですけど、そのチャレンジのおかげで、糧になる学びが見えると思います。力試しとしてでも、海外進学に挑戦する価値はあると思います。

楊 美雅 2020年入学 第4期生

ペンシルベニア大学

トーマス・ジェファーソン・ハイスクール・フォー・サイエンス・アンド・テクノロジー出身

アメリカ・バージニア州生まれ。ペンシルベニア大学では、ビジネス・フラタニティ(社交クラブ)「Phi Gamma Nu」の他、「Wharton Asia Exchange」や「Global Research & Consulting」などのクラブに参加、課外活動も積極的に取り組む。

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