山田健人
2020年 第4期生
ハーバード大学
海城高等学校出身
2021年現在、8,000万を超える人が紛争や迫害により故郷を追われていると言われています。長年に渡り、世界が抱える大きな課題の1つとなっている難民の過酷な状況に取り組むことを志す山田健人さん。
2021年現在、8,000万を超える人が紛争や迫害により故郷を追われていると言われています。長年に渡り、世界が抱える大きな課題の1つとなっている難民の過酷な状況に取り組むことを志す山田健人さん。 その目標に向けた大きな一歩を踏み出すため日本を飛び出し、アメリカの大学へ進学した彼に、その理由と意気込みを語ってもらいました。
その目標に向けた大きな一歩を踏み出すため日本を飛び出し、アメリカの大学へ進学した彼に、その理由と意気込みを語ってもらいました。
August, 2021
留学を考えるようになった初めの一歩は、中学高校時代を通して行っていた模擬国連。模擬国連は、高校生あるいは大学生が各国の大使になりきり、国連の会議を模擬して国際問題を議論するという活動です。高校2年生の時に高校模擬国連の国際大会に行かせてもらい、いろんな国の学生たちとの議論を通して感じたのは、これを高校の次のステップでやったらどれほど楽しくて、どれほど自分の未来のためになるのかということ。海外の大学に行ったら、模擬国連の国際大会で経験したような他国の学生とともに学ぶという素晴らしい経験ができるんじゃないか、と夢が膨らみましたね。他国の学生たちは日本の高校生とは発想が全然違うんです。考えたことがなかったなという柔軟な発想に触れて刺激を受けたのも、留学を意識したきっかけですね。
新学期のため、渡米を控えた数日前。地元の公園でお話を伺った。
はい。僕は日本で中学高校を過ごしたわけですけど、勉強面でも、リーダーシップの形成という面でも、日本の中学高校でやっているようなことが、「案外、通用するな」と感じました。特に、日本の社会で培ったリーダーシップが模擬国連の国際大会でも通用した、というのは大きかったです。日本で培ったリーダーシップは何かというと、コンセンサスに基づくリーダーシップ。後々のトラブルを避けるために、周りの人たちの同意をしっかりとってリードしていくということです。例えば、僕は中学高校を通して委員会活動を積極的にやっていましたが、主要な先生に対して「こういうことをやりますが、大丈夫ですか」という事前の話し合いをすること、生徒に対してもどんどん情報を出していって意見を聞くこと、を心がけていました。日本人はシャイな面があるので、なかなか意見を言ってくれないんですけれど、ちゃんと合意を取っておかないと最後に文句が出てしまいます。意見が出にくい、かつ、コンセンサスベースである日本の社会だからこそ、1人1人の意見を事前に確認していく作業が本当に大切だということを、日本の中学高校で学びましたね。
模擬国連の国際大会でも、議論が白熱するあまり話し合いが決裂しかねない状況だったので、持参した付箋を各大使に渡して意見を書いてもらい、それらをもとに議論を進めていきました。つまり、1人1人の意見、感触を十分に確かめながら進めていく、そういうリーダーシップを国際的な場でも発揮して、通用したというのは嬉しかったですね。
そうですね、やっぱりそこは、粘り強くやっていく必要が…(笑)。自分を分析することはあまりないですけど、僕自身、地道にコツコツ積み上げていくのは好きな方かなと思ってます。
400万を超える写本、600万を超えるデジタル化された文献など膨大なリソースを有するハーバード大学の図書館。
アメリカの大学、という点でいうと、学際的な学問ができるところです。いわゆる、リベラルアーツ教育というもので、学問分野の垣根を超えて勉強しようという理念が浸透しているのが、非常に大きなメリットなんじゃないかなと思ってます。例えば、僕は政治学専攻ですが、1年次には地学のGIS(地理情報システム)という、様々な情報を地図上にプロットして分析をする方法について学びましたし、統計学も学んでいます。政治学を専攻しているからといって、政治のことばかりを学べばいいかというとそうではなくて、今、政治分野の中で統計学は大切ですし、地学で学んだことを政治に生かすこともできます。柔軟に勉強しているからこそ、自分の専門分野で新しい発想が生まれやすくなると思います。
とりわけハーバード大学を選んでよかったと思うのは、リソースと機会が充実しているところ。ハーバード大学は研究の種類や研究室が豊富にありますし、教授との距離感も近いんです。レポート1つ書くにしても、出して終わりではなくて、レポートを書く段階から教授や教授の助手に相談できますし、書いた後もフィードバックをいろいろいただけるので、授業以外にも学ぶ機会がたくさんあると感じます。また、文系の学生にとっての命である図書館が非常に充実しているのも大きな魅力です。
僕は小学4〜6年生まで、つまり2011年〜2014年の間、イタリア・ローマに住んでいました。2011年〜2014年というのは、東アフリカ、あるいは中東、北アフリカからの難民が非常に増えていた時期です。その問題がちょうど僕がいる時期にイタリアでクローズアップされていて、それが難民問題に興味を持つようになったきっかけだったと思います。その後、帰国して、日本における難民の受け入れ実態を知り、イタリアから帰ってきた身からすると、本当に問題だと感じました。日本は難民、移民の受け入れに非常に厳格です。例えば、他国では難民として認められていたような人たちが、日本に来ると難民として認められないことがあります。そういう状況を知って、難民問題により関心を抱くようになりました。
僕は、リーダーは触媒みたいなものだと思っています。リーダーというポジションにいるから指示を出したり、他の人に圧力をかけたりして、それで合意を作るというのは、それは理想のリーダーだとは思わないですね。“Leadership without authority”(権威なきリーダーシップ)、同じチームの一員として他の人が意見を出しやすいような環境を作って、1人1人の声をちゃんと聞いて、それを吸い上げた上で1つの方向に向かっていけるよう促す存在がリーダーなんじゃないかと。ハーバード大学の学際的な学びで得られる柔軟な知見も生かしていきたいです。
授業で扱った文献。アメリカだけでなく、世界各国の政治、政策について学んでいる。
なぜ討論会を見てきたかというと、最初は英語の勉強のためだったんです。模擬国連の国際大会に出る時に、英語力で負けていたらどうしようもないなと思って、英語のトレーニングとして始めたんですけど、次第に内容にも興味を持ち始めたという流れです。自分の中で一番いいなと思っているのは、1984年にレーガンとモンデールの間で行われた大統領選挙での討論。通称、スターウォーズ計画という、宇宙に防衛ネットワークを作るという構想をレーガンは打ち出していて、それをモンデールが激しく口撃するところが見どころです。これに共感していただける人はまずいないと思いますが…(笑)。モンデールが口撃しながらも、口調にとても気を使って話しているのがわかるところと、宇宙まで戦争、紛争を持ち込むのかという人間の儚さといいますか、ある種の愚かさも垣間見えて、内容面でも非常に参考になります。
この討論で最も印象に残っているフレーズは、「Why don’t we stop this madness now and draw a line and keep the heavens free from war?」。モンデールの一連の話の中での最後の言葉だったと思うんですが、いろいろと話した上でこの決め台詞が来たかと。気を使いながらも、非常に力を込めて放った言葉だったのも印象的でした。人にものを伝える時って、どういうふうに伝えるのかが内容と同じくらい大事なんだと気づかされましたね。人に伝えるときに一番大切なのはまず考えを分かってもらうことなので、とつとつとした喋りが理想的じゃないかと思うんです。僕個人としても、なるべく穏やかに話したいタイプですし(笑)。でも、時にはモンデールのように、これだけは伝えなければいけないということに関しては、伝えたいんだという気持ちを全面に出して伝える。そこの使い分けが大切なんだなと感じた討論でした。
アメリカの大学に行くということは、チャンスの扉を開くチャンスです。アメリカの大学に進学すること自体が1つのチャンスですが、それ以上に、アメリカの大学でいろんな研究リソースを使えることや、恵まれた研究室や図書館を利用できること、もっと幅広くいうと世界の学生たちと一緒に勉強するという、いろんなチャンスが転がっている。それがアメリカの大学だと思うんです。だから、アメリカの大学に行くというチャンスは、その先のあらゆるチャンスを掴む機会なんだよと、伝えたいです。
ハーバード大学
海城高等学校出身
小学4年〜6年生の間をイタリア・ローマで過ごし、日本に帰国。私立海城学園中学・高等学校に進学し、国際的な視野の体得を目指すグローバル部の部長を務める。高校2年生で出場した高校模擬国連国際大会(グローバル・クラスルーム高校模擬国連国際大会)で事務総長賞を受賞。Harvard Prize Bookの受賞経験も。趣味は各種討論会の視聴の他、草野球、フルート演奏。