水野蘭子
2023年入学 第7期生
ユニバーシティ·カレッジ·ロンドン
市立札幌開成中等教育学校出身
哲学、政治、経済という3つの分野を横断して学ぶ専攻「Philosophy, Politics and Economics(略称PPE)」に惹かれ、イギリスへの大学進学を決めた水野蘭子さん。
哲学、政治、経済という3つの分野を横断して学ぶ専攻「Philosophy, Politics and Economics(略称PPE)」に惹かれ、イギリスへの大学進学を決めた水野蘭子さん。 「PPE」との出会いをきっかけに深まった“大学で学びたいこと”、そしてその先にある“将来、取り組みたいこと”について、彼女に話を聞きました。
「PPE」との出会いをきっかけに深まった“大学で学びたいこと”、そしてその先にある“将来、取り組みたいこと”について、彼女に話を聞きました。
August, 2023
私の場合、実は具体的な将来の目標から学部を選んだというよりも、もうまずこの「PPE」という学部にすごく惹かれたのがまず先にあって、そこから自分の将来とどう結びつけられるかを考えた、という流れなんです。「PPE」という学問を知る前は、大学で何を学びたいのか、正直、漠然としていました。興味のあることや自分の好きなことは分かっていたんですけど、どの学部もいまいちピンとこなくて。例えば、私の好きなことの一つに、今ある常識とか、当たり前とされている価値観や制度を疑って考える、ということがあります。具体的にどんな価値観や制度に興味があるかというと、社会保障や選挙制度、民主主義など、社会を動かしている仕組みです。
学校の授業で、人口減少、少子高齢化が進む日本の社会を知識として学んだり、自分が住んでいる市の職員の方と環境政策について考えるワークショップに参加したりする中で、今のままだと日本の将来は持続可能じゃないと感じることが多くありました。それで、制度も含めたこれからの社会のあり方、政治のあり方、ひいては国のあり方を考えてみたい、と思うようになったんですが、大学で政治だけを学びたいかというと、ちょっと違うなと…。
迷っていた中で、ネットサーフィンしている時にたまたま見つけたのが、「Philosophy, Politics and Economics」。政治と経済を哲学的な視点も絡めて紐解くという学問が存在することに衝撃を受けて、これだ!とビビッときたんです。今の社会の状況を批判的に捉えて分析、考察していくという学びは、すごく楽しそうだと思ったし、私の興味や性格からも合っていると感じました。
海外進学を意識したのは小学生の頃、親や祖父母から「海外の大学も面白そうだね」と言われた記憶があって、それからすごく漠然とですけど、海外で学ぶのも面白そうだなというのが、頭の片隅にありました。「PPE」はいろいろな国の大学で教えられていますが、発祥はイギリスのオックスフォード大学。「PPE」の歴史が長い国の方が充実したプログラムが受けられるだろうと思い、イギリスの大学の中から志望校を絞っていきました。
志望校の中でも、UCLは統計などの数学的なアプローチも大切にしており、それがUCLで「PPE」を学びたいと思う決め手になりました。例えば、楽しみにしているプログラムの一つ、「Q-Step」では、定量的なリサーチから今の社会で起きている現象を分析する「ソーシャルデータサイエンス」を学ぶ予定です。哲学的な視点と理論で考えることも好きだけれど、今後はやはりデータを活用できることが大事になってくるかなと考えています。
まず、一番興味があるのは政治のあり方、国のあり方、自由や公平性というテーマなので、データを使いながら、そういった概念をどう政策に落とし込めるのか、ということを在学中に考えていきたいなと。それで、ゆくゆくは、公共政策に関わるようになりたいと思っています。具体的には、官公庁などの公的なセクターよりも、シンクタンクや民間機関で、公共政策の提言や評価に携わりたいです。というのも、私が今持っているイメージとして、日本の行政の立場から公共政策に携われば、より実効性があるんですが、縦割りの組織の中でどうしても局所的な問題を担当しがちになってしまうだろうということがあるので、組織にとらわれない立場でいられるのが理想です。大局的な視点で、日本の社会を俯瞰しながら、公共政策に携わりたいですね。
そもそも“理想の社会像”を思い描く時って、ある一つの価値観に基づきがちなのが、ちょっと引っかかるというか、気になっています。公共政策はいろいろな価値観を持った、様々な人たちのものなので、「これが絶対的に正しい」というよりは、「絶対的に正しい価値観は存在しない」という姿勢で、いろいろな人の多様な価値観を吟味して政策を作り、判断していけるような社会であるといいのかな…。ちょっとまだ、自分の中では答えが定まっていない状況です。
私が通っていた高校は札幌市の中では海外進学が盛んな学校だったので、地方の中では比較的恵まれた環境にいたと思います。でも、年に何人も海外のトップ大学に行くような、都内近郊の学校出身の人たちの環境と比べると、あまりそういった海外進学の情報を持っていないですし、海外進学する先輩も少ない状況だったので、自分から能動的に動かないといけないのが大変で。とにかくインターネットを駆使して、特に海外のオンライン掲示板「Reddit」で、イギリスの大学を受験する人たちが集まる掲示板を見たり、イギリスの高校生、大学生向けのオンラインコミュニティ「The Student Room」を見たりして、なるべくリアルな情報を収集することを心がけていました。
留学や奨学金の説明会は、コロナ禍以降はオンラインで開催されるものがほとんどだったので、今は地方にいても参加しやすい状況になったと思いますね。課外活動も、私はオンラインで実施される研究プロジェクトに参加しました。これは「幼少期に確立される性別の固定観念」について、他県の高校生4名と協働しながら、論文の読解や分析、絵本、アニメ等のメディアの調査を3ヶ月間かけて行うもの。他県の高校生と3ヶ月にわたって協働するのはオンラインでないとできないことだったかなと思うので、今は能動的に動けば、地方にいるデメリットも多少はカバーできるようになったかもしれません。
あと、今振り返って大変だったなと思うのが、大学と奨学金の合否発表、入学希望の手続きの締め切りといったスケジュールが怒濤のように重なっていたこと。1ヶ月先の未来が見えない中で、いろいろな決断をしていかなきゃいけないのが本当に辛かったですね。奨学金が全部落ちてしまったら、イギリスよりも学費が安いオランダの大学に行こうかなと思ったり、でも本当にオランダでいいのかなという迷いもあったりして、いろいろな選択肢を前に混乱した時期もあって…。でも、あんまり悲観的になりすぎず、なんとかなるっしょ!みたいなマインドセットを持つようにして、乗り越えた感じがします。
受験生だった頃、海外のトップ大学への進学や給付型奨学金の取得に関して、都道府県別の合格者数を見たり、海外進学についての様々な説明会で話を聞いたりしていると、地方からだと難しいのではないかと感じていました。サポートや課外活動の機会などが、地方だと限られていますし。それで自信喪失した記憶もあります(笑)。でも大切なのは、自分で自分の可能性を潰さないで、応募できるものは応募して、出願できるところは出願すること、だと思うんです。
実は、この柳井正財団の奨学金も、私は正直、受かるとは思ってなくて。予約型と合格型がありますが、予約型はそもそも受かると思っていなかったので受けず、合格型は本当にダメ元の気持ちで提出期限の10分前に提出したので…。UCLも受かると思っていなかったから、最初は出願することすら考えてなかったですし。これは生存者バイアスかもしれないから、あんまり気軽にアドバイスできないけど、何でもとにかく受けてみて可能性をちょっとでも上げていくと、うまくいくことがあるし、そうしないと始まらないよと、私の個人的な経験からですけど、そう思います。
ユニバーシティ·カレッジ·ロンドン
市立札幌開成中等教育学校出身
UCLでは在学中に提携大学への留学をすることもできるため、3年次にイギリス以外の大学でも学ぶことを計画中。趣味は洋楽を聴くこと。サブリナ·カーペンターからハマり、アーティストのSNSやYouTubeを見ることは、日常的に英語に触れる機会にもなったそう。