医学と音楽に共通するのは「人を笑顔にする力」。
ハーバード大学とバークリー音楽大学で学ぶ毎日。

今井美友

2019年入学 第3期生

ハーバード大学、バークリー音楽大学

ホーレスマン・スクール、ジュリアード音楽院出身

ハーバード大学で神経学を、バークリー音楽大学でバイオリンを学ぶ今井美友さん。勉学と音楽、どちらも全力で取り組み、多忙な毎日を乗り越えてきた彼女には、「たくさんの人を笑顔にする」という夢があります。

ハーバード大学で神経学を、バークリー音楽大学でバイオリンを学ぶ今井美友さん。勉学と音楽、どちらも全力で取り組み、多忙な毎日を乗り越えてきた彼女には、「たくさんの人を笑顔にする」という夢があります。 大学、専門分野の垣根を越えてボーダレスに学ぶ今井さんに、両立をやり切る情熱の源、未来への志について聞きました。

大学、専門分野の垣根を越えてボーダレスに学ぶ今井さんに、両立をやり切る情熱の源、未来への志について聞きました。

August, 2021

高校で興味を持った医学と、大好きな音楽
私にしかできない方法で人を笑顔にしたい!

― 今井さんは大学に進学する前から、将来の夢は「人を笑顔にすること」と明言されていますね。なんだかワクワク感と希望が伝わってくる夢だなと思います。どんなことがきっかけで、そう思うようになったのですか?

最初のきっかけは、老人ホームや病院でバイオリンを弾くボランティアをしたこと。私の弾くバイオリンでみんながわーっと笑顔になってくれるのがすごく嬉しくて、私はみんなを笑顔にさせたい!って、強く思うようになりました。その時から、私の目標はずっと変わっていません。とにかく人を笑顔にしていきたいっていう、もう、それだけです!

相棒のバイオリンと。在学していたジュリアード音楽院では、「楽器は自分の命の次に大切なもの。必ず肌身離さず持つ」という暗黙のルールがあったそう。

― 人を笑顔にするための方法はたくさんあるように思います。その中で、今井さんなりのアプローチとして、ずっと力を入れてきた音楽だけでなく、医学も選ばれた理由は何でしょう?

音楽は耳に届いたその瞬間に人を笑顔にできる一方、医学は“その瞬間”というよりは、目の前の人を助けて、それがゆくゆくはその人の幸せに、笑顔に繋がっていきます。時間はかかるかもしれないけれど、そんなふうに笑顔になってもらうために頑張るというのが、すごく魅力的だなと思って。また、勉強にも力を入れていく中で、私は体の仕組みを学ぶことが好きだなと気づいたのも大きな理由の1つです。高校の時に興味を持ち始めた医学と、ずっと続けてきた音楽。この2つの“私の好きなこと”を大学でしっかり学んで、そこで得る経験や知識をできるだけ使って、たくさんの人を笑顔にしたいんです。だから受験時は、2つの異なった専門分野の学位が取得できる“ダブル・ディグリー”というプログラムのある大学を選びました。

医学も音楽も、諦めずに学ぶ
“ダブル・ディグリー”は最高の選択

ハーバード大学の寮「Wigglesworth Hall」をバックに。今井さんも寮で生活している。

― “ダブル・ディグリー”を提供する大学は増えてきているようですね。進学先として、今井さんがハーバード大学とバークリー音楽大学を選んだ理由は何ですか?

コロンビア大学とジュリアード音楽院など、医学と音楽を学ぶ“ダブル・ディグリー”ができる場所は他にもあります。でも、私がやりたいことに一番近かったのがハーバード大学とバークリー音楽大学の組み合わせでした。アメリカで初めてジャズを教えた学校として有名なバークリーは、最近では映像音楽やビジネスマネジメントなどの専攻もあり、様々な面で音楽業界の最先端をいく大学。私はずっとクラシック音楽をやってきましたが、新しいことにも挑戦していきたくて、音楽をいろんな方向から学べるバークリーを志望しました。このバークリーと、みっちり勉強ができそうなハーバードとの“ダブル・ディグリー”は、私にとっては最高の組み合わせだったんじゃないかなと思ってます。

大好きだから続けてきた音楽と勉強
どちらかだけ、なんて選べない!

― ハーバード大学に向けた勉強と、バークリー音楽大学に向けたバイオリンの練習。相当ハードな受験生活だったのではと思いますが…。2つの両立は大変ではなかったですか?

そうですね、大変だったかな…(笑)。バイオリンの練習と勉強、どちらにも時間を割かないといけないというのは、大学受験だけでなく、中学高校を通してずっと抱えていたジレンマでもありました。私は10歳からジュリアード音楽院に在学しながら学校にも通っていましたが、ホームスクールで1日10〜12時間も音楽の練習をしているような友達がたくさんいて、私もいつかはどちらかを選ばないといけないと悩み続けてきたんです。

悩んだまま大学受験の時期になって、周りからも両立は無理だと、最終的には選ばなきゃいけないよとずっと言われてきました。でも、選べませんでした。私、バイオリンも、勉強も、両方大好きなんです!どちらかを諦める自分をどうしても想像できなくて。バイオリンを弾かない私、勉強しない私、というのが、全くイメージできませんでした。それに、自分の本分として、本当にやりたいことは全力でいきたいんです。もし諦めるのであれば、全力でやってからにしようと思いました。

受験勉強をしていた時の1日のタイムスケジュールは、7時頃に登校して朝のうちに先生に聞きたいことを質問しに行き、8時すぎから午後3時半頃まで学校で勉強。帰宅して30分から1時間は必ず昼寝をした後、夜8時から9時頃までバイオリンの練習をします。それから近くにある大学の勉強スペースに行って、夜中の12時から1時頃まで勉強して、大学が閉まった後は自宅に戻って勉強を続けていました。やることが終わってから、または脳が疲れたら寝るようにはしていて、基本的に徹夜はしなかったです。特に意識して行っていたのは「脳の気分に合わせた切り替え」。脳がバイオリンの練習モードに入っていたらバイオリンを弾く、バイオリンの練習に疲れてきたら勉強、どちらも嫌だったらゲームで遊び始めたり、寝たりして、頭を切り替えていました。「次、勉強するぞ!」という気持ちになるために、大好きなゲームやアニメの時間も適度に取っていたのが、勉強もバイオリンも継続してできたコツだったかなと思います。

ボストンのダウンタウンにある公園「Boston Common」。学生だけでなく、ボストンに住む人々の憩いの場となっている。

ハーバード生は“アヒル”のよう(笑)
おすまし顔の下で、必死に頑張ってます

― ハーバード大学とバークリー音楽大学、それぞれで学んでみてどんな印象を持っていますか?

ハーバード大学は、みんなで学び合おうとする精神がすごいと感じます。特に印象に残っているのが、1年次に受けた「LS50」という授業。生物学、化学、物理、コンピューターサイエンス、統計学など、医学系のこと全てを扱うようなクラスで、毎週ものすごく難しい課題が出るんです。1人では絶対に解けないような課題なので、クラスみんなで図書館に集まって夜通しやって、朝6時にデリバリーのピザを食べながら必死に課題を終わらせていました。学ぶことが本当に好きな人たちが団結して、お互いを高め合おうとする雰囲気が本当に心地よくて、ハーバードに来てよかったなと実感した経験です。私が思うに、ハーバード生は“アヒル”。一見、すました顔をしてすい〜っと泳いでいるんですけど、水面下ではバタバタと必死なんです。あんなに余裕がありそうなのに、どうしてこんなにいろいろできるんだろうと思うクラスメイトでも、実はすごく頑張っていたという場合が多いですね。

一方で、バークリー音楽大学の学生は本当に音楽を愛してやまなくて、熱血。それにとてもオープンです。例えば、寮の部屋をみんな開けていて、「誰でも入ってきていいから、セッションしようよ」という雰囲気があります。印象に残っているのは、1年次秋学期、バークリーでの授業初日。ジャズバンドの輪に入り、自己紹介を少ししただけでいきなり即興が始まったんです。受験勉強のために勉強した即興とは違う、みんなの心が通った瞬間の高揚感があって、部屋のドアをずっと開けてまでみんなが音楽をやりたいっていう気持ちがわかった瞬間でした。それからも、音楽を愛している人同士が1つの場所に集まると、やっぱりいい音楽ができるなと感じることは度々ありますね。すごく楽しいです。

“一目惚れ”で専攻を神経学に変更
学ぶたび 「もっと知りたい!」がとまらない

― 大学に進学して2年が経ちます。これまでの2年間を振り返って、どのような変化や学びがありましたか?

コロナ禍によりオンライン授業中心の大学生活だった前学期。今学期からキャンパスでの対面授業に戻り、より刺激のある毎日に。

まず、ハーバード大学での専攻が変わりました。これは私の大学のいいところで、入学時と卒業時で専攻が違う人が約80%もいます。ちゃんと単位を取れるなら、最後の最後まで専攻を変えていいんです。私も入学時はバイオメディカルエンジニアリングを専攻していましたが、今は神経学を専攻し、経済を副専攻しています。なぜバイオメディカルエンジニアリングから神経学に専攻を変えたかというと、神経学に一目惚れしたから(笑)。医学部の基礎的な授業として、生物学や化学、物理学など、これまで関わったことがないような分野に触れる中で神経学にも出合い、生物としての身体的な面でも、心理的な面でも、全てにおいて神経が関係しているところに「好き!」と夢中になりました。

特に、鬱や自閉症などの心理的な症状も医学的に見ると、神経が深く関わっています。例えば、神経同士の連携が上手くいっていなかったり、神経物質の分泌が弱くなっていたりと、医学的には具体的な理由があるんです。でも、精神的な理由だとか、心が弱いからだとか、症状を本気に捉えていない人がいまだに多いですよね。そこに違和感を感じて、もっと勉強したい、もっと知りたいなと思いました。 経済を副専攻にしたのも、同じような理由です。コロナ禍における経済政策に関する授業で、航空会社などに援助するお金の2%ほどしか精神病院などに充てていないこと、他の病院と比較すると精神病院に対する支援は驚くほど少ないことを知り、軽んじられていることに違和感を持ったからです。神経に関わる症状を扱う病院に対して経済的な面でもアプローチした方がいいと思って、経済を取ることにしました。

― 神経学を専攻しながら、全く別の分野である経済を副専攻で学んで、さらにバークリー音楽大学での授業もありますよね。受験勉強のとき以上にハードな毎日になっていませんか?(笑)

無謀ですよね(笑)。やらないで後悔するよりはやる方がいいと思うので、頑張ってます。この2年間で専攻は少し変わりましたが、「人を笑顔にする」という最終目標は変わりません。たくさんの人を笑顔にするために、ハーバード大学とバークリー音楽大学であらゆる知識と刺激に触れて、これまでにないような、私にしかできない方法を見つけていきたいなと思ってます。

College Life

― 留学を希望する中高生のみなさんに、メッセージをお願いします。

自らを「一度決めたら突っ走るタイプ(笑)」と話す今井さん。「留学を希望するなら、自分からリソースに手を伸ばして、どんどん前に進んでほしいです」

最初の一歩は、留学をして自分が何をしたいか、どうして留学をしたいのかをしっかり考えること。目標を立てて覚悟が決まったら、進む道はもう見えているはずなので、あとは走るだけ!また、今は留学に関する質問に答えてくれる人たちや、資金面で支援をしてくれる財団など、手を差し伸べてくれる人たちがたくさんいます。そういう人たちに積極的にリーチアウトして、どんどん頼っちゃっていいと思います。

今井美友 2019年入学 第3期生

ハーバード大学、バークリー音楽大学

ホーレスマン・スクール、ジュリアード音楽院出身

幼少時に渡米、ニューヨークのホーレスマン・スクールで中学高校を過ごす。10歳よりアメリカの名門音楽校ジュリアード音楽院に在学し、平日は学校で勉強を、週末は音楽院でバイオリンを学ぶ日々を送る。中学生当時、高校生オーケストラに最年少でコンサートマスターと部長を兼任。趣味は読書、ゲーム、アニメ、愛犬クーちゃんの散歩。10歳の頃からのブログも時々更新中。 http://mieu0905.blog74.fc2.com

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