自分の視野の限界は、世界の限界じゃなかった。
海外進学は、初めて主体的に決めた“人生の選択”。

橋本佳奈

2020年入学 第4期生

カールトン・カレッジ

フェリス女学院高等学校出身

日本における高校教育のシステムに違和感を持ち、海外進学を考えるようになったという橋本佳奈さん。現在は、アメリカ・ミネソタ州にあるカールトン・カレッジで教育学を学んでいます。

日本における高校教育のシステムに違和感を持ち、海外進学を考えるようになったという橋本佳奈さん。現在は、アメリカ・ミネソタ州にあるカールトン・カレッジで教育学を学んでいます。 高校生の時に何を考え、何を思い、なぜアメリカの大学に進むことを決めたのか、当時を振り返りながら語ってもらいました。

高校生の時に何を考え、何を思い、なぜアメリカの大学に進むことを決めたのか、当時を振り返りながら語ってもらいました。

August, 2021

進路を“流れ”で決めてない?
日本の教育システムに持った違和感

― 進学先として海外を視野に入れるようになったのは、日本の高校の教育システムに違和感を持ったことがきっかけだったと伺っています。高校時代のどんな経験や状況を経て、橋本さんはその“違和感”を持つようになったのでしょうか?

私が通っていた高校は進学校で、大学受験に向けていろんな準備を手伝ってくれる学校なんですが、3年間のスケジュールがほぼ決まっています。高1で文理選択、高2で志望校を決めて、そこからはもう志望校に向けた勉強という、ベルトコンベアー式に近いシステム。周りの同級生も私も、普段は部活や趣味に没頭して、その“決めないといけない時期”が来たら慌てて決めてというのを繰り返して、気がついたら志望校も全部決まっていた、っていう状況になりがちで…。そこにまず違和感を持ちました。特に私は、志望校を決める段階で、将来やりたいことについて何もわかってないなっていうことに、そこでやっと気がついたので(笑)。そもそも、「将来について、まだ考える時間が必要だ」と気づいたとしても、そこにこだわって悩むよりも、その気づきは流して志望校を決めて、受験に専念した方が結果的にいい学校に行けて、いい職業にも就けるというように、日本の教育システムはなっていると思ったんですよね。流れに乗った方がいい、みたいな空気も学校に漂っている気がしました。

夏休みを利用して、ヨルダンでのサマープログラムに参加したという橋本さん。数日後には渡米しキャンパスに戻る予定...と、多忙な学生生活を送る。

― 感じ取った違和感を流さずに、橋本さんは立ち止まったんですね。

そうですね。自分が何をしたいのかっていうのを、毎日毎日、すごく考えました。でも、決める上での判断材料が足りないと感じて、いくら考えても結論が出なかったんです。それでも、周りからは進路を決めてと圧が来る、という中で、「海外に行けば、選択肢の可能性を狭めずに学べる」ってふと気づいて、アメリカの大学に行こうと決めました。私の周りはみんな、大学=日本の大学だと思っていたので、海外の大学に行きたいと言った時には、「なんでそんなこと考えるの」とすごく驚かれましたね。

― そういう状況だと、親御さんと学校の先生から理解を得るのも大変ではなかったですか?それぞれに対して、どのように協力を得ていきましたか。

両親に関しては、進学先というよりは、卒業後も含めた私の人生全体に関しての心配の方が大きかったようなので、大学に入るまでだけではなく、入学後もどういう風にしていきたいかということまで、しっかり説明しましたね。プレゼン用の資料も作りました(笑)。両親と話をして思ったのは、親の視点から見た「娘ができること」と、自分から見た「私ができること」の認識が結構、違っていたこと。「私はこういうこともできるよ」というアピールをして、その認識を擦り合わせて、安心してもらえるようにしました。先生に対しては、「こういうサポートを、この時期にしてほしい」というのを書面にしてお渡ししました。先生にお願いしたい役割を明確にできたから、支援する姿勢を整えてもらいやすかったかなと思います。

学校では教えてくれない
「主体的に人生を選択していく力」。

― アメリカの大学の中でも、カールトン大学を進学先に選んだのはなぜですか?カールトン大学はリベラルアーツ教育の名門校ですが、それが理由でしょうか。

実は、特にリベラルアーツ大学に行きたかったわけではないんです。カールトン大学は学部教育の質が全米一位と言われています。私は大学では教育を学びたいと思っていたので、教育を知るためにはまず、最高峰の教育を受けるのがいいんじゃないかと思ったのが理由の1つですね。また、私は過去に留学経験がなかったので、学生数が少なくて、サポートが厚い大学であるところも惹かれました。

― 「大学で教育を学びたい」というのは、先ほどおっしゃった高校時代の経験の影響もありますか?

教育に興味を持ったのは、そうですね、高校の時に思った違和感や疑問によるところが大きい気がします。日本の、特に高校教育って、自分についても、社会についても全然知らない状況で進路選択を迫ってきますよね。なんとなく偏差値や、卒業後の年収で進学先を選ぶのって、すごくリスクが高いと思うんです。ベルトコンベアーのように流されるまま選択するんじゃなくて、主体的に自分の人生を選択していく力、みたいなものを伸ばす教育を高校で実現したいなと思って、教育学を主専攻、心理学を副専攻にすることを考えていましたね。今はまだ、専攻を何にするか最終決定はしていないのですが、「主体的に自分の人生を選択していく力」、そこから繋がる「個人が自己実現できる社会」は、今も変わらず持っている目的です。

学問が教えてくれるのは
「ものの見方」と「思考の枠組み」。

教育学を主専攻にするかどうか、なぜ決めてないかというと、これまで社会学、心理学、コンピューターサイエンスなど、いろんな科目を受けてきましたが、どれも面白くて!(笑)。特に社会学は、本当にたまたま受講しただけだったんですが、学ぶ上で大切なことに気づけた授業でした。社会学って、社会に起きる出来事を学ぶものだと思っていたんです。でも実際はもっと幅広くて、社会問題を学ぶというよりは、問題の1つをピックアップして、社会と人間がどう関わっているのかを見るものだよって、教わりました。題材じゃなくて、見方だったんです。何か問題を解決したい時には、そういういろんな見方、考え方の枠組みを持っていられることが、解決策を見つける上で大事なのかなって気づくきっかけになりました。そこから、学問って、何を対象としているかが重要じゃなくて、対象をどのように見るのかという、思考の枠組みを提供してくれるんだって思ったんですよね。1つの題材を、いろんな枠組みで見ることができるということを知ったのが、入学してからこの1年で学んだ、一番大きなことだったと思います。なので、「主体的に自分の人生を選択していく力」、「個人が自己実現できる社会」、についても、目的としてはそのままですが、どういうアプローチを取るのかは、まだ考え中です。人間はどのように選択するのか、を深く考えるのであれば、教育学ではなくて心理学とか、別の授業を取ってみるのもありかなと思っています。

― カールトン大学に通っている学生、授業の雰囲気はどうですか?橋本さんは、カールトン大学入学前に、日本の大学にも少しだけ通われていたとのことなので、何か日本との違いを感じることはありますか?

授業では、生徒が何か質問して、教授がそれに答えて、さらに生徒が質問して、というディスカッションで授業が進んでいく感じですね。教授から何か聞かれた時に、自分が答えるんだっていう意識がみんなに浸透していて、誰かしらちゃんと答えるので、授業がどんどん進んでいく雰囲気があると思います。それに、みんなナチュラルに自己主張ができるので、いろんな考え方を聞くことができるのはすごくいい刺激になっています。高校時代はオンラインで授業を取っていたとか、学校に通うのではなくホームスクーリングをしていたという子もいて、個人に即した教育を受けてきた様々なバックグラウンドの学生がいるのも面白いですね。あと、主体的に選択する力という点でいうと、アメリカの大学は2年生の終わりに専攻を決めるので、同級生の誰に聞いても、まだ迷っているという人が多いです。つまり、アメリカの学生の方が、選択する力に長けているというわけではなくて、アメリカの教育システムが学生に迷う猶予を与えてくれるんだなって感じました。迷っている期間の中で試行錯誤を繰り返して、選択の精度を高めていっているのかなという印象です。

教育だけでなく、心理学、コンピューターサイエンスにも興味を持ち始めたそう。「今は、どんどん視野と知識を広げていきたいです」と話す。

― 最後に、「主体的な人生選択」をしていきたいけれど、どうしたらいいかわからない、という高校生のみなさんに、何かアドバイスはありますか?

私自身、高校の頃を振り返ってみると、「自分の視野の限界が、そのまま世界の限界」だと思い込んでいた時がありました。考えがたこつぼ化しがちというか、自分の中に、自由な考えを邪魔している“思考の塊”みたいなのがあったんだと思います。だから、なるべくいろんな情報に触れたり、いろんな人に話を聞いてみたりして、自分が当たり前だと思っているものをまずは崩すこと。次に、こういう選択肢があるんだって知っても、自分ができるわけないと思ってしまうのも固定観念だと思うので、これまでやってこなかったこと、できそうにないなと思うことに、ちょっとずつ挑戦してみて、意外とできるんだっていう体験を重ねていくこと。

College Life

ヨルダンでのサマープログラムも、「ちょっとずつ挑戦する」、「自分もできる」という経験の1つとなったそう。

― 「できそうにないなと思うことに、ちょっとずつ挑戦する」というのは、橋本さん自身も実践してきたことですか?

そうですね。特に大学に入ってからは、できないなと思ってしまうことがたくさんあって。例えば、キャンパス内で仕事をしてみたりとか、学外の研究室にメールをしてみたりとか、英語でそんなことできるわけがないって心のどこかで思っていても、ちょっとやってみるかって、行動してみたら、意外といい結果だったりするんですよ。もちろん失敗することもあるんですが、それはそれで、失敗に対する耐性がつくので大丈夫です(笑)。最初はやるだけでも緊張するようなことを繰り返して、だんだん平気になっていく、というプロセスを経ることはいい経験になると思います。

橋本佳奈 2020年入学 第4期生

カールトン・カレッジ

フェリス女学院高等学校出身

横浜市の小学校を卒業後、中高一貫校へ進学。海外経験はなく、今回のアメリカ進学が初めての長期にわたる海外滞在。趣味は、読書、写真を撮ること、Googleストリートビューで世界を旅すること。

その他のインタビュー