夢は、世界中の子どもたちに
笑顔と幸せを届けること。

近嵐まり

2023年入学 第7期生

コロンビア大学

山脇学園高等学校出身

近嵐まりさんの将来の夢は、「エンジニアとして、子どもの心に寄り添い、安全に楽しめるテーマパークを創ること」。

近嵐まりさんの将来の夢は、「エンジニアとして、子どもの心に寄り添い、安全に楽しめるテーマパークを創ること」。 2023年の今年、その夢を叶えるための学びが、アメリカ·コロンビア大学で始まろうとしています。渡米を控えた彼女に、海外進学を選択するまでの想いや背景、これからの意気込みを聞きました。

2023年の今年、その夢を叶えるための学びが、アメリカ·コロンビア大学で始まろうとしています。渡米を控えた彼女に、海外進学を選択するまでの想いや背景、これからの意気込みを聞きました。

August, 2023

大学や進路を考えるより、
そもそも、“私の好きなこと”って?

― 近嵐さんは、将来の夢として「テーマパークを創るエンジニア」を挙げていますね。しかも楽しいだけではなく、「子どもの心情を考慮し、安全技術が信頼されるテーマパークを」とされています。どのような経験、きっかけから、この夢を描くようになったのですか?

テーマパークのエンジニアになりたいと思うきっかけの原点には、母との思い出があります。うちはひとり親家庭で、母はいつも忙しく働いてくれていたのですが、学校から帰った後は一人でいることが多かったので、子ども心にちょっと寂しさを感じる日々でした。だから母と過ごすのは、幼い私にとっては至福の時間。特に休みの日には、時々、母がテーマパークに連れて行ってくれて、嬉しかったのをよく覚えています。テーマパークで過ごした時間は、私にとっては母とのコネクションを感じられる、とても幸せで大切な時間でした。

でも、幼い頃からテーマパークを創りたいと思っていたわけではないんです。実は、高校生になり、進路選択について考えるようになって初めて、進路やこれから学びたいことはもちろん、もっと根本的な、「自分自身、何が好きなのか」が、よく分かっていないというのに気づいて…。今思えば、「テーマパークのエンジニア」に辿り着くまで、かなり迷走していたと思います(笑)。手当たり次第、課外活動としていろいろなことをやってみて、これじゃないなー、あれじゃないなーって手探りした感じです。模擬国連に参加したり、物理の大会に出てみたり、好きなミニチュア工作のチュートリアル動画を作ってYouTubeにアップしてみたり…。そしてその課外活動の一つで経験したのが、在日クルド系難民の学習支援ボランティアでした。

渡米は数週間後。お母さんも渡米し、一時的にアメリカに滞在する予定をしている。「母の方がワクワクしている気がします(笑)」

“笑顔のない子どもたち”に衝撃を受け
決意した夢

この学習支援ボランティアは、小学生ぐらいの在日クルド系難民の子どもたちにオンラインで学習支援を行うというものです。そこで出会った子どもたちは、私がこれまでに接してきた子どもたちとは全然違うという印象がありました。どう違うかというと、全然、笑顔を見せないんです。それに衝撃を受けて、本や映画でクルド人のことを調べるようになり、彼らが受けたひどい差別や迫害の実態を知れば知るほど、子どもたちが笑顔になれない理由が分かるというか…。あの子たちが味わったのは、きっと世の中のあらゆるものに対する信頼が揺らぐレベルの恐怖。どれだけ怖かっただろうかと想像すると、本当に悲しくなります。

課外活動として参加して学習支援ボランティアは、近嵐さんにとって、自分の過去・未来と向き合う時間にもなった。

それで、笑顔すら失くしてしまうくらいの厳しい状況にいる子どもたちにも、何かしらの幸せを届ける方法はないのかと私なりに考え、思い出したのが、幼い頃の私がテーマパークで感じた幸せな気持ちです。母と一緒に行ったテーマパークが私の孤独や寂しさを癒やしてくれたように、今度は私が子どもたちの心に寄り添い、至福の時間と空間を創ることができたらと考えるようになりました。特に、今のテーマパークは経済的に恵まれた一部の子たちが楽しむものになってしまっているんじゃないかと思っていて…。やっぱり一番の理想は、どんな環境の子もアクセスできて楽しめるテーマパーク。地方や国を越えてどこでも行けるような、移動式のテーマパークを創りたいなと思ったんです。

移動するテーマパークとなると、どんな環境でも安全に楽しめるという安全工学、技術的な面もとても大切。それで、「子どもの心情を考慮し、安全技術が信頼されるテーマパーク」を目標にしようと決めました。この夢は、私に強い目標意識を与えてくれている気がします。進路について考えていた頃、よく「何のために勉強するのか」を自問自答していましたが、ようやくそれに具体的な答えが出たというか。

― 「テーマパークを創る人」というと、例えば、アトラクションを企画するプランナーや、テーマパークの空間をデザインするデザイナーなど、様々なアプローチがあるかと思います。その中で、「エンジニア」に惹かれたのはなぜでしょう?

アトラクションや世界観がどうやって作られているんだろうと気になって、いろいろリサーチしていたら、テーマパークを作っているエンジニアたちのブログを見つけたんです。そこで乗り物のシステムを解説する動画を見た時、高校で習っている物理や数学に基づく理論が詰まっていることにびっくりして。エンジニアリングのすごさに感心したというか、単純な式をクリエイティブに応用すれば、人をこんなに楽しませることができるんだと、すごくエンジニアリングの可能性と醍醐味を感じました。

「アメリカのテーマパークにもいろいろ行き、どんなエンジニアリングの技術が生かされているのか体験したいです!」と目を輝かせる近嵐さん。

学校で勉強した理論の応用で
もっとクリエイティブなことができる

物理と数学は、世の中が成り立つ仕組みがきれいな式で出るのが面白くて、もともと好きな科目です。世界を知ることができた気分になれるみたいな(笑)。でも、高校生の私でも知っている原理を応用して、テーマパークのアトラクションが構成されているとは想像もしていなかったので、学校で学んでいることは現実と地続きなんだと実感しましたね。勉強の意義みたいなものが、自分の中で腑に落ちた瞬間だった気がします。

それで、もっとエンジニアリングについて知りたいと思っていたところ、高校3年生の時には東京大学大学院の工学部で研究活動をお手伝いする機会に恵まれました。参加した研究活動の分野は、「流体力学」という、流体が静止している時の性質、運動している時の性質、流体の中での物体の運動を研究する分野の一つ。率いている先生は、主に水の流体の動きを制御するエンジニアリングを研究していて、機械やインフラの防腐防水加工の技術をナノスケールで実施しています。研究って楽しい!と、純粋なワクワクを感じた経験をさせてもらいました。

その東京大学大学院での体験で、できれば4年間ずっと通年で研究活動に携わりたいと思うように。だけど、工学以外に芸術や社会についても学んで、自分のエンジニアリングに取り入れたいなとも考えていて。そうすると、より学際的な学びができるアメリカの大学なのかなと思い…と言いつつ、実は、アメリカの大学に進学したいと思い始めたのはもっと前からなんです。

学生ローンを組んででも、
アメリカの大学に行きたい!

さかのぼれば中学3年生の頃、アメリカ·シカゴでのサマーキャンプに参加したのが、アメリカでの進学を意識したきっかけ。コミュニティカレッジでディベートを学ぶというプログラムに参加したのですが、現地の同年代の子たちのディベート力が私とは全然違うのにびっくりしたのを、今でもよく覚えています。それに、自分のアイデンティティをオープンにして、率直な態度で人と関わり合う姿も印象的でした。それで自分も、多種多様な人たちに囲まれたアメリカのような環境で教育を受けてみたいな、と思うようになりました。

「アメリカの大学に進学したい」と、母と学校の先生には進路選択の面談ではっきりと伝えました。その時は2人とも「頑張れ」という感じでありがたかったんですけど、やっぱり金銭面は心配をされて。奨学金を受けられるという保証もなかったので、当然ですよね。でも、学生ローンを組んでも行きたい、と伝えました。将来、アメリカでエンジニアになった時のお給料を調べてみて、そこから計算したらローンを組んでも返済できる額だと思ったので、それなら、夢をあきらめる必要はないですよね。私の本気度が伝わったのか、それを聞いた母も先生も本気で応援してくれて、嬉しかったです。

高校3年生の時に助手として参加した「流体力学」の研究活動。「着眼点から分析まで、教授を始めとする研究チームの凄さを実感。そして何より、研究の楽しさを知りました」

― いよいよ、アメリカでの大学生活が始まりますね。進学先のコロンビア大学で、これから楽しみにしていることは何ですか?

コロンビア大学は、リベラルアーツに寄りすぎてもいなければ、バリバリのテックスクールでもないので、工学だけでなく、芸術や社会も学びたいと思っている私にはぴったりの場所。文系科目も含めた必修のコアカリキュラムを受講するのが楽しみですね。あとは、もう目をつけているエンジニアリング系の研究室があるので、教授たちに会って話を聞いてみたいです。気になっている研究室の一つは、「Creative Machines Lab」。マシンやロボットを作る産業系の研究室で、粒子で物をつかむ「Jamming Gripper」というマシンや燃えない素材、食べ物を作り出す3Dプリンター「Food Printer」など、本当にクリエイティブなことをやっているんですよ。その研究室に入る機会を、今からすごく楽しみにしています。

あとは、コロンビアにはいろいろなダンスのクラブがあるみたいなので、参加してみたいなと思っています。ダンス、すごく好きなんです。踊っていると、自分の些細な動きにキャラクターが出たりするじゃないですか。その人ならではのものになるところが、特に好きですね。実はもう「入りたいんですけど、どうすればいいですか」って、問い合わせしてみました(笑)。学期が始まったら、オーディションを受ける予定です!

College Life

好きなことを見つけるために、
嫌いなことも知る必要がある

― 最後に、中高生の皆さんにメッセージをお願いします。特に、様々な理由から、海外進学は自分には難しいと考えている学生さんたちに、伝えたいことはありますか?

「課外活動でいろんなことを試してみたからこそ、今があります」と話す近嵐さん。「じっと悩んでいるよりは、行動してみるのがいいかもしれないです」

海外進学でも国内の大学に進学するのでも、周りの人たちがこう言うから、とか、自分はよく分からないからみんなと一緒にする、じゃなくて、自分はどういう人になりたいのか、自分がどういう人生を望んでいるのかと、「自分を主体にして考えられているかどうか」をまずは振り返ってみてほしいです。

進路を考えるにあたって、私がやってよかったと思っているのが、前にお話しした「自分の好きなこと」を見つけるために、いろいろ実際に体験してみたこと。だからこそ、私は何が好きで、何が嫌いなのかというのが分かりましたし、好きなことを見つけるためには、嫌いなことを知るっていうのもきっと大事なプロセスなのかな、と思います。とことん自分と向き合えば、おのずと最適な結果が出るはずです。

近嵐まり 2023年入学 第7期生

コロンビア大学

山脇学園高等学校出身

海外の長期滞在は今回の大学進学が初めて。語学力は学校での勉強のほか、Netflixで好きなアメリカのコメディ番組を字幕なしで見ることで身につけたそう。好きな番組は「Modern Family」と 「Saturday Night Live」。

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