“新潟からアメリカへ”を強みに変えて。
全ての女性が“諦めない”社会を目指したい。

高橋侑珠子

2021年入学 第5期生

ウェズリアン大学

新潟清心女子高等学校出身

2021年今年、故郷の新潟からアメリカへ飛び立った高橋侑珠子さん。「地方に根強くあるジェンダーギャップを解消したい」という将来の目標を胸に、ウェズリアン大学に進学しました。

2021年今年、故郷の新潟からアメリカへ飛び立った高橋侑珠子さん。「地方に根強くあるジェンダーギャップを解消したい」という将来の目標を胸に、ウェズリアン大学に進学しました。 地方出身の18歳として、女性として、ジェンダー平等が実現される未来への熱い思いと、初めての海外進学に向けた意気込みを聞きました。

地方出身の18歳として、女性として、ジェンダー平等が実現される未来への熱い思いと、初めての海外進学に向けた意気込みを聞きました。

August, 2021

学校生活を通してジェンダーギャップを経験。
“女性だから”で可能性を手放すのは悲しい。

― 高橋さんは「地方のジェンダーギャップを解消し、女性の活躍を推進することで地方に活気を取り戻す」ことを将来の目標として掲げていますね。世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数2021」では、日本は世界156カ国の中で120位。主な理由として、国会議員の女性割合が低いことなど政治参画における男女差が言われていますが、当時高校生の高橋さんがこの目標を掲げるにあたり、もっと日常レベルの男女差を経験されたのではないかと想像します。どのような経験から、この目標が形作られていったのでしょうか?

話を伺ったのは、高橋さんの地元・新潟市。撮影を行なった翌々日には、渡米する予定を控えていた。

小学校から高校までの学生生活での経験がきっかけです。小中学校は共学、高校は女子校だったのですが、そこでもうジェンダーギャップを感じることが多くありました。例えば、共学だった小中学校では男の子が生徒会長や運動会のリーダーをやるのって、当たり前だと捉えられていたと思います。一方で女の子がリーダーをやると、同級生から目立ちたがりだとか、力不足だとか言われる場面を多く見ましたね。先生も「大丈夫?やれる?」と女の子に声をかけていて。もちろん、気にかけてくれているところもあったとは思うんですけど、思い返すと、女の子にしか言っているのを見たことがないなって(笑)。幼い私たちの中にも、先生の中にも、無意識のジェンダーギャップみたいなものがあったんじゃないかなと。そういう場面に遭遇してきて、やっぱり納得いかないし、悔しいし、ずっとモヤモヤしてきました。そのモヤモヤを抱えながら高校生になって、そこで初めて“本来あるべき環境”を体験したんです。女子校だったので、どういう役職であろうと、女の子が積極的にイニシアチブを握ります。そういう高校生活の中で、本人のスキルや能力で評価してもらえる、それが生かせる環境が、本来はどこにでもあるべきなんだよなって、思うようになりました。地方のジェンダーギャップという“地方”の部分について考えるようになったのも、高校に入ってからです。「学校の中では、女性が活躍できる環境が当たり前にあるけれど、社会に出たらそうもいかない」、「新潟にいたら、別に大したことができるわけない」、「女性だから、社会的な活躍は望めない」って、同級生の子たちが、最初から諦めていて。私、それはすごくもったいないと思うし、まだまだ十分あるはずの可能性をそこで手放しちゃっているのって、すごく悲しいと思うんですよ。新潟にいたら、やりたいことができない、自分の思うように生きられないから、新潟の外に出ていこうともなるわけで…。それって、新潟だけじゃなくて、今の地方の人口減少や少子化というところに少なからず影響してると思うんです。なので、上手く言葉にできないんですけど、どうにかしたいなと。自分が少しでも力になりたいなと考え始めました。

― 学校教育の場ですでにジェンダーギャップを感じていたということですが、その解消の手がかりも「教育」にあると考えているそうですね。

はい。そう考えるようになったきっかけは、高校時代に参加した教育関連の団体が主催するサマースクールでの経験です。先ほど私がお話しした小中学校、高校とは、真逆の教育環境がそこにあって、すごく新鮮だったんですよ。ジェンダーギャップを感じさせない場になっているのはもちろん、納得できないことはとことん突き詰めて話し合う、現状に問題があるなら変えるために動く、誰もがしがらみなく行動できる環境がありました。こういう教育を早くから受けることが、男女の対等な対話に、ジェンダーギャップの解消の土台に繋がるんじゃないかと考えています。私も将来、新潟などの地方を拠点に、教育プログラムを普及していくようなプロジェクトをしてみたいです。

寮のシャワールームは男女共用。
“ジェンダー”への関心が高い環境の大学へ

― 今年から、いよいよ大学生活が始まりますね。特に海外の大学では、ジェンダー学を専攻できる場所は数多くあるかと思いますが、中でも、アメリカのウェズリアン大学を選ばれた理由は何だったのでしょうか?

まず、なぜアメリカかというと、アメリカって、多様なバックグラウンドや考え方を持つ人、社会における問題に興味を持つ人が多く、コミュニティとして1つになって社会問題に取り組もうとする姿勢がある国だと思うんです。それはなぜなのか、そこにどんな社会的、歴史的、文化的背景があるのかを分析して学びたいので、これはもうアメリカに行く以外に選択肢はないんじゃないかと思って、決めました。ウェズリアン大学は、大学の校風にジェンダーニュートラルがあるというか、ジェンダーという枠を学生に押し付けないところがあるのに惹かれました。例えば、シャワールームは全部、男女共用。そういう校風がある分、逆にジェンダーって何だろうとか、ジェンダーが及ぼす影響って何だろうっていうことに興味関心が集まるんですよね。そういう環境が、これからそのテーマについて学んでいきたい自分にとっては、ベストだと思いました。

地方出身者ならではの大変さが、
“強み”にもなる

― 海外の大学を受験すると決めてから、両親や先生を含め、周囲の理解を得ることは大変ではなかったですか?

家族はもともと、私のやりたいことをすごく応援してくれていたので、ウェズリアン大学に行きたいと話をした時も変わらず支えてくれました。学校は、海外大学への進学という前例がなかったので、先生方はいろいろ難しく感じるところがあったと思いますが、できる限りのサポートをしてくださいました。ただ、今振り返ると、具体的にどういうサポートをすればいいのか分からないという部分があっただろうなと…。こういう協力をしてほしいと、自分で調べて伝えたりしていたんですが、私自身もちょっと心細かったですね。

今年2021年から、初めてのアメリカ学生生活、初めての寮生活をスタートさせる高橋さん。

― 地方出身という立場だと、得られるリソースも限りがあったのではないかと思います。逆に、海外大学を受験する際に、地方出身者であることの“強み”を感じたことはありますか?

地方出身であることは、アピールポイントの1つになるとは思いました。大学の先生方やアドミッションの方が願書を見ていく時に、それこそ東京や大阪は知っていても、新潟のことは全然知らないんですよね。リソース含め、いろんな制約のある地方から、ここまで頑張ってきたんだねということが見えると、そこが評価に繋がります。バックグラウンドも考慮してもらえるので、それを強みに変えていくことはできると思います。

自分らしくあり、やりたいことをやる。
この姿勢を貫きたい。

― これからウェズリアン大学で、どんなことを学び、それをどのような形で、高橋さんの将来に生かしていきたいと考えていますか?

新潟を飛び出し、大きな一歩を踏み出す。

まず、ジェンダーに関してアカデミックな視点から見たことはないので、理論や学術的な基礎を学んでいく必要があるなと思っています。そこから、社会やコミュニティが一緒になって、その問題に取り組む体制をどう作ることができるのかについて、分析して学んで、それを日本に持ち帰りたいですね。今の時点での理想ではあるけど、1つの教育プログラムにしたり、女性と男性で相互のコミュニケーションが取れる環境であったり、何か形にしていきたいなと考えています。最終的には、女性が活躍してインパクトを作り出せるような、エコシステム…っていうと、大袈裟に聞こえますが、環境を、新潟などの地方に作りたいです。あとは、今まで私はメンターに習う立場だったので、今度は自分も、誰かのメンターというか、ロールモデルになれるように努めたいと思っています。

― それでは、ロールモデルとして、後輩の女性たちにこれからどんな姿を見せていきたいなと思われていますか?

なんだろう…。人によって目指す姿や目標って違うので、必ずしも私がベストな例になるかどうかは分からないですけど…。それこそ、私の諦めない姿、やりたいことはやっていいっていう、前に進むところを見てもらえれば、一番いいのかなと思います。何かの枠にはまる必要はないし、人から貼られたレッテルを気にする必要もないです。自分が自分らしくあって、やりたいことがあるからそれをやる。この姿勢を貫きたいと思っています。

College Life

― 最後に、中高生のみなさん、特に地方出身の女性のみなさんに向けて、何か伝えたいことはありますか?

まず1つ知ってほしいのは、海外進学は決して不可能な選択肢じゃないということ。実際、私は新潟の高校を卒業した普通の学生だけど、今、行きたい大学に行けるようになったし、こうやって奨学生にもなることができて。1年前の自分に「未来はこうなるよ」と言っても、多分、信じてもらえないと思う。でも実際、それが現実になったのは、自分が本当にやりたいという熱意を持って、諦めなかったからだと思うんです。だから、決して不可能な選択肢ではないということと、諦めないでほしいと伝えたいです。あと、先ほど、ロールモデルになれたらということを言いましたが、海外進学に興味があって、相談したいことがあったら、私にリーチアウトしてほしいなと思います。私がどれくらい力になれるかは分からないですけど、自分の経験が少しでも参考になればいいなと思うし、目標に向かって頑張る人たちの手助けになりたいと本気で思っています。

高橋侑珠子 2021年入学 第5期生

ウェズリアン大学

新潟清心女子高等学校出身

新潟県出身。小学校から高校まで市内にある学校で過ごし、海外で学ぶことは今回が初めての経験。高校時代に、10代のためのジェンダーエンパワーメントコミュニティ「Lean In High Schoolers」を立ち上げ。尊敬する女性は、Meta(Facebook)のCOO、シェリル・サンドバーグ。

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